若き民主化運動指導者の多忙な日常

■グエンハー・キエングォック( 源河 建国 / ハラカワ ケンゴ )

脱ベトナムボートピープル2世

 弁護士会や警視庁など多岐にわたる依頼主を持つフリーランスの通訳として、超多忙な日々を送っています。

 ここ数年、来日するベトナム人による事件や事故が急増しています。数年前まで外国人犯罪といえばそのほとんどが中国人か韓国人と相場が決まっていましたが、それをアッという間に追い抜いてしまったのがベトナムです。中でも圧倒的多数を占めるのが、在留期間が過ぎても日本に留まり、不法滞在で摘発されるベトナム人です。

 在日ベトナム人の数は年々増え続け、現在よそ30万人のベトナム人が日本で生活しています。近年、ベトナムの大学進学率はおよそ8割ということですが、経済が停滞している現在、大学を出ても職がないという若者が大勢います。そこでベトナムの若者たちが考えるのが、外国への留学と就労です。留学先として好まれるのは日本、韓国、台湾だということですが、特に日本は人気があります。だから、大学の語学コースでも、日本語を選ぶ学生が非常に多いのです。

 建国さんによれば、ベトナム人は独立心が強く、野心家が多いということです。多少の無理をしてでも成功を掴みたいと考える人が多いので、自国を飛び出して外国にチャンスを求めるのです。一日も早く、少しでも多く稼ぎたい――という気持ちが、ベトナム人による違法行為の急増を招いています。

 1970年代、共産党の圧政を逃れて、約40万人のべトナム人が“ボートピープル(難民)”として、船で日本に流れ着きました。大部分は欧米各国に移住して行きましたが、日本に留まった人もいました。建国さんの両親もそのうちの一組です。日本生まれの建国さんは、日本語もベトナム語もペラペラ。ベトナム人の気持ちも日本人の気持ちもよく理解できるので、通訳としてはうってつけなのです。

 そして、建国さんにはもう一つの顔があります。祖国ベトナムの民主化を目指す「ベトナム革新党」( http://viettan.org/ ) 日本支部の若手のリーダーとしての顔です。ベトナム革新党は欧米を中心に数万人のメンバーを持つ世界的組織で、日本支部にも数十人のメンバーがいます。ベトナム共産党の独裁政治を逃れて海を渡ってきた建国さんの両親も、このベトナム革新党の一員です。

「赤ん坊の頃から母親に背負われてデモに参加していました。昔は大使館に卵や石を投げ込むような激しいデモもやっていましたが、最近のデモはおとなしいものです。せいぜい横断幕を張って数人単位で抗議の言葉を叫ぶくらい。警察の規制が厳しく、それ以上は出来ないし、我々の方もやる気はない。我々が目指しているのはあくまで平和革命であり、暴力革命は一切考えていない。全世界に訴えて、外交圧力によって現体制の変革を考えています。」

 と、建国さん。

 ベトナム革新党は政治組織ですが、それとは全く別の活動として、彼は日本に滞在するベトナム人が気軽に集まって交流できるコミュニティづくりにも力を入れています。それが「日本在住ベトナム人協会」( https://www.facebook.com/hiephoiVN/ ) です。こちらは関東を中心に150名ほど、日本全国では数百名のメンバーがいて、親睦会や情報交換などを通じ、日本に住む全てのベトナム人への支援の輪を広げています。

関連記事

ページ上部へ戻る